ことばの世界へようこそ〜大岡信ことば館と大岡信さん〜
2011年03月04日
「ことば」の魅力や「学び」の楽しさを伝えている施設が、三島にあるのを皆さんご存じだろうか。三島駅北口から歩いて1分、Z会文教町ビル1、2Fにある「大岡信ことば館」がそれだ。2009年10月5日にオープン、斬新で美しい「ことば」の展示に、来る度にわくわくしてしまう場所である。
大岡信さん
大岡信(おおおか・まこと)さんは、1931年三島市生まれの詩人。沼津中学(現・県立沼津東高校)時代から作歌・詩作を行っていた。一高文科、東大国文科卒業。読売新聞外報部勤務を経て、明治大学・東京芸術大学の教授を務めた。詩と批評を中心とした多様な精神活動を行い、また連歌から発展させた連詩を外国人とも試みている。日本芸術院会員。代表作は『紀貫之』(筑摩書房)、『折々のうた』(朝日新聞社)など。父は歌人の大岡博さん。
Z会と大岡信ことば館
通信教育、参考書・問題集や一般書籍の発刊、高校・大学受験の教室(塾)という3つの柱で、幼児、小学生、中学生、高校生、大学生、社会人の"学習"をサポートする株式会社「Z会」。イズハピスタッフも高校生のときに大変お世話になった。そもそもなぜZ会ビルに大岡信ことば館を開設することになったのだろうか。
1991年、株式会社増進会出版社創立60年記念「若山牧水全集」の監修をお願いしたことから、Z会と大岡さんの友好関係が始まった。三島に本社を置くZ会。大岡さんが三島市出身ということもあり、20年ほどの間に、三島市民文化会館での「大岡信文化講演会」の開催や、東京での「大岡信フォーラム」運営の手伝いをし、親交を深めていった。
旧三共製薬工業跡地を用いた三島駅北口の開発の一環として、Z会新社屋ビル建築計画が持ち上がり、私企業のビルではあるが、地域内外の方々に向けて「人の流れを生む」機能を考慮すべきという命題もあがった。時を同じくして「交友関係の中から手元に集まったたくさんの美術品、書籍類、資料類などの展示・管理をしてほしい」という大岡家の願いが合致し、大岡信ことば館オープンという運びとなったという。
大岡信ことば館開館記念特別展 その6
開館特別記念として行ってきた「大岡信ことば館記念特別展」は、今回の「その6」で完了を迎える。「その6」のテーマは「捧げるうた」。毎回テーマに即して選ぶ「十篇の詩」の展示では、フランスの詩人エリュアール氏や版画作家駒井哲郎氏、妻深瀬サキさんなど、大岡さんが人に捧げた詩を空間の中に表現。捧げた詩は、ことばの達人、大岡さんならでは。対象そのものを詩に表さず、見える世界や、人物を何かに見立てて書かれている。そして、あいうえお順に展示してきた大岡信コレクション(大岡さんの手元に集まったたくさんの美術品、書籍類、資料類など)は、今回、大岡信さん自身に迫った。自著の装禎(そうてい)、美術家加納光於氏に手ほどきを受けながら作った版画、また旅先でのスケッチなど、文芸作品以外の興味深い作品の数々を鑑賞することができる。
*大岡信ことば館開館記念特別展 その6
期間:2011年2月5日(土)〜5月31日(火)
休館日:水曜日、3月25日(金)・26日(土)
開館時間:10時〜17時(入館は16時半まで)
入館料:大人・大学生500円、学生(小〜高校生)100円、65歳以上200円
入館券プレゼント(3月10日締切)詳しくはこちら
大岡信さんにインタビュー
現在、裾野にお住まいの大岡信さん。運が良ければ、当館で会うこともできるとか。今回は特別に、大岡さんにインタビューをさせていただいた。
─大岡さんにとって詩とはどういうものでしょうか
わたしの詩は「水」の一言に集約されます。
水とは形のないもの--赤いものが混ざれば赤くなるし、来たものを受け入れて形を作っていきます。そして人間の7〜8割は水でできています。水を通して、人間や動物、あらゆる生命が繋がっています。詩も水と同じような気がします。向こう側からこちらにぶつかって来たものを詩に表してきました。
─先日、三嶋暦師の館に伺ったところ、大岡さんが幼少期、この家のトイレの広さにビックリしたというエピソードを教えていただきました(2006年10月発行『東京人』より)。ご出身である三島で、ほかに思い出に残るエピソードがありましたら教えてください。
源平川で、ホタルをどっさり集めて母に怒られた記憶があります。広小路駅近くには祖母が経営する駄菓子屋があって、お菓子をただで食べられたのが嬉しかったですね(笑)。あと、川でよく魚を獲って遊んでいました。
─小さい頃から詩人になりたかったのでしょうか
将来の夢はなかったですね。ちょうど私が小学生の頃、第二次世界大戦が始まりました。昨日まで正しかったことが、今日は違う世の中です。20歳で私は死ぬものだと思ってましたから、将来何になりたいかなんか考えられなかったのです。終戦を迎え、ふと見上げた伊豆の青空から、新しい人生が始まりました。
─詩人の大岡信さんは、戦後誕生したんですね
色んなものを吸収して自分の形が出来てきました。最初の型を作るのが大変でしたね。16歳のときに書いた『夏のおもひに』でひとつの詩の形をつかんだ気がします。
─大岡信ことば館について一言お願いします
「大岡信ことば館」の活動は、ことばを発し、聞き、理解する、人間全体の活動に関わるものです。企画展示・講演会・音楽会などの活動も活発に行い、こうして養われる豊かな「ことば」を、若い世代に伝えてゆきたいと考えています。
取材を終えて
壁一面に浮かび上がる詩、空間いっぱいに表現された詩など、工夫を凝らした面白い展示に「また来たい」と思ってしまう大岡信ことば館。もちろん、文学が好きでなくても十分に楽しむことが出来る。大岡信ことば館の詩に、一つの正解(解釈)はない。各々が見て感じとったものが「正解」だと思う。当館へ来て、お気に入りの詩・フレーズをぜひ見つけてほしい。
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