「ひょうたん島」もアートも! 片岡昌の世界
2010年07月23日
7月1日、池田20世紀美術館にて「片岡昌展 超次元アートと『ひょうたん島』」がスタートした。ひょっこりひょうたん島といえば、世代を越えて広く愛されている人形劇。おなじみのテーマソングが頭を駆け巡ったり、ユニークなキャラクターたちが繰り広げるドタバタ劇に思いを馳せたりする方も多いだろう。子どもから大人まで多くの人を虜にした、魅力的な人形たちの生みの親が、片岡昌さんだ。
●劇人形作家 片岡 昌
片岡さんは1932年に鎌倉で生まれ、高校時代に劇人形と出会い、友人とゲリラ的に人形劇を行ったという。そんな経験がきっかけとなり、1950年、「ひとみ座」(現「人形劇団ひとみ座」)に劇人形作家として加わる。以来、舞台で使われる人形や装置を数多く手がけてきた。
その名を一躍有名にしたのは、NHKの人形劇「ひょっこりひょうたん島」だ。人形に直接手を突っ込む従来の操作法「手遣い」を捨て、棒で操る「棒遣い」をテレビ上で初めて導入。下から動かすことで撮影アングルの自由度が大きく広がり、人形自体も大胆かつダイナミックな動きが可能になった。また、パーツとして、木をろくろで削った「回転体」を採用。発注した回転体を組み上げることによって、多くの人形が酷使されるテレビ人形劇に合わせた大量生産を可能にした。さらに、黒目が白目からはみ出したり、眼鏡から目が飛び出したりする仕掛けによって、コミカルで愛嬌たっぷりの表情を生み出すことに成功。「ひょうたん島」は好評を博し、劇人形作家として多くの人が知るところとなった。
●アーティストとしての顔
しかし、片岡さんの創造性は、決して人形だけにとどまらない。劇人形制作の傍ら、日本アンデパンダン展にも出品するなど、アーティストとして芸術活動を続けてきた。ほぼ独学で美術を学び、辺境的な立ち位置にいた片岡さんの作風は、枠に囚われることなく常に自由奔放。皮肉・風刺を取り入れたものが多く、二次元・三次元と戯れるトリックアートのような表現も得意とする。3DCGやCAD等の技術がない時代に、まるでコンピュータで計算したかのように正確に作られた立体的な造形の構築力・表現力は、思わず手を伸ばして触れてみたくなってしまうほど見事だ。
今まで小さなテーマを取り上げた展示はあっても、今回のように全体を俯瞰するような展示は初めてとのこと。コミカルな人形とアートな作品の割合が5:5くらいになるよう配置され、子供から大人まで広く楽しめる構成になっている。
●展示作品紹介
以下、片岡さんご本人に、いくつかの作品を紹介していただいた。
「これは、人が忘れてしまったもの・・・子供の頃、戦争中にこんな風景があった、ってイメージを掘り起こそうと思って。(少年の彫刻を指さして)この帽子の徽章なんてね、昔台湾にいたらしいドイツ人が『見たことがある!』って言うんですよ」
埼玉の古民家ギャラリー&カフェ「山猫軒」で展示するために作られたシリーズ。この時代を知る人はもちろん、知らない人の胸にも何かを呼び起こすような作品になっている。
「運命の女神という存在から見れば、人間なんて虫ケラのようなものでしょう。どんなに着飾った立派な王や将軍でも。そう思って、顔を虫にしちゃったんです」
シェイクスピアの4大悲劇のひとつ、マクベス。世界に広く知られたこの劇の人形も、昆虫のような大胆なデザインがなされている。隣に展示されている旧マクベス(1961)の人形のモチーフは、幾何学的なアフリカの仮面。多くの引き出しを持ち、既存のイメージに囚われない発想の豊かさが感じられる。ただ人間の演技をマネするのではなく、単純化された象徴的な人形と演出を使い、人形劇の新たな表現と可能性を示した作品だ。
「青銅じゃないものを、塗りで青銅のように『見せかける』ことができる。本物の青銅である必要なんかなくて、見た目をそれらしく『ごまかす』んです」
青銅らしさ・質感がとてもリアルで、素材がポリエステルだとは想像もつかない。「本物かどうかは問題ではない、そう見えればいい」という考え方は、軽さや扱いやすさ・実用性が最優先される舞台装置を手掛けていたからこそ持ち得るものだ。
「ハダカなのに、もっとハダカ」
トポロジー(厚みのない曲面)を面白く使った作品。他にも、正面からは普通に見えてもナナメから見ると実はへこんでいる顔、腰から裏返ったヴィーナスなど、びっくりするような着想から作られたユニークな作品が多い。
「人類のDNAを解析すると、ある一人の黒人の女性に行き着くんです。そう考えると、人種なんて関係ないでしょう」
高さは約3m。展示会場に収まりきれず苦労したエピソードもあるという、大きく迫力のある作品。力強い母の胎内でくるくる廻る、白・黒・黄で塗られた子ども。片岡さんの、一人の人間としてのメッセージが感じられる。
●創作活動について...
「作品の核になるのは『遊び心と風刺』ですね。何よりも自分が楽しんで作っているけれど、それが『人を楽しませる』と取られる」
そんな風に自然体で語り、気さくに笑う片岡さん。鋭い視点を持つアーティストでありながら、懐が広く開かれている印象を受けた。そんな片岡さんは、自身の芸術について、やはり人形劇を手がけてきたことが大きく占めるという。
「リアルなものとデフォルメされたものの違いを聞かれたりするんだけど、自分の中では同じなんです。一貫している。たとえばひょうたん島のトラヒゲも、こんなにデフォルメされていますけど、いくらでもリアルな顔に戻せるんです。常にリアルが根底にあるんですよ。『悪いヤツかと思うといいヤツだったりする』、井上ひさしさんの脚本のリアルな面を元にしています」
ひょうたん島のキャラクターも、リアルな考え方と造形に裏打ちされているからこそ、可愛らしい姿の中に人間味を感じさせるのかもしれない。
「今回は(展示として)いろいろなものがあるので、整合性がないように見えるけれど
『片岡はおもしろいものを作る』と思ってくれる人がいたらいいな、と」
●おわりに
目にしただけで思わず微笑んでしまうような、愛らしい劇人形。そのすぐ隣に、時代や背景を含めた"人間"そのものを、時にはユニークに、時にはシュールに、またある時にはグロテスクなまでに描き出した作品が並ぶ。ドライで現実的、そしてちょっぴり皮肉屋な視点もまた、「片岡昌」というアーティストが持つ魅力的な一面なのだ。
「ひょうたん島」しか知らない人も、芸術を愛する人も、「アートなんてわからない」という人も──多くの人を虜にする、片岡さんの多面的世界に触れてみてはいかがだろうか。
片岡昌展 超次元アートと「ひょうたん島」 2010年7月1日(木)~10月5日(火)
イベントスケジュール
片岡昌アーカイブ・プロジェクト
http://akirakataoka.com/
(イベント情報や、それ以外にも企画展の様々な情報をお伝えしています。)
池田20世紀美術館
http://www.nichireki.co.jp/ikeda/
(美術館のサイトです。会場までのアクセス等もこちらが詳しいです。)
[関連リンク]池田20世紀美術館
〈イズハピ編集部・ぴよこ〉
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