上野&尾崎のカメラ散歩

 

パンケーキレンズ総集編・パンケーキレンズで撮るパリ

標準レンズの分類に一眼レフの携行性向上を目的とした焦点距離40〜50mmの薄型レンズ群がある。パンケーキのように薄いことから「パンケーキレンズ」の愛称で呼ばれる。これらのレンズは1964年に当時のミノルタカメラが同社の一眼レフ・SRシリーズ用として商品化したロッコールTD45mm f2.8が皮切りである。
続いてGNオートニッコール45mm f2.8(日本光学・ニコン 1969年),SMCペンタックスM40mm f2.8 (旭光学工業・ペンタックス・HOYA 1976年)、ヘキサノンAR40mm f1.8(小西六写真・コニカミノルタ 1979年)、テッサー45mm f2.8 (京セラ 1983年)、XRリケノン45mm f2.8 (リコー 1993年)、Aiニッコール45mm f2.8P (ニコン 2001年)、フォクトレンダーウルトロン40mm f2 (コシナ 2007年)等がフィルム一眼レフ用として登場している。
またデジタル一眼レフ用として、2006年に登場したペンタックスDA21mm f3.2 、2009年にはオリンパスからMズイコーデジタル17mm f2.8が発売され、デジタル一眼レフの環境でも単焦点パンケーキレンズの魅力を楽しむことが出来るようになっている。
パンケーキレンズの魅力は携行性の他に、35mmフィルムの画面サイズ24×36mmの対角線43mmに近い焦点距離が再現する自然な画角にある。特に各社のレンズ設計陣が多少の遊び心も加味して薄型レンズ設計に挑戦しているために名品と称される優秀レンズが多いことも魅力の一つである。
例えば、2001年に登場したAiニッコール45mmは1969年のGNオートニッコール45mmのリメイクではなく全く新しいコンセプトで設計され卓越した描写特製を具現化すると共に「金属鏡胴」「專用UVフィルター」「専用レンズキャップ」「ふじつぼ型金属フード」等徹底的にフィルム一眼レフファン心理をくすぐる極め付けの「こだわりレンズ」で発売後8年を経過した現在でも中古市場で人気の高いレンズとなっている。
私は学生当時からロッコールTD45mmをミノルタNEW SR-1と組み合わせて愛用していたが、前述Aiニッコール45mmを発売と同時購入した時に「パンケーキウィルス」に感染、短期間に全てのパンケーキレンズを購入する重症患者になった。
ミノルタ一眼レフ一辺倒だった私にとって各社パンケーキレンズの購入は他社一眼レフボディも揃えることを意味し、各社の'MFマニュアルフォーカス一眼レフ最終製品と組み合わせたパンケーキシステムを構築した。
これらのパンケーキシステムは、ライフワークの「パリ夜景」の撮影行時にサブカメラ・ニコンF6のサブとして一台ずつ交替でカメラバッグの片隅に挿入して出掛けている。

ノートルダム寺院とセーヌ川夜景

ノートルダム寺院とセーヌ川夜景

フィルム1眼レフ用各社パンケーキレンズ

フィルム1眼レフ用各社パンケーキレンズ

ロッコールTD45mm f2.8

ミノルタの一眼レフ・SRシリーズの廉価版として商品化され、1964年当時の価格は何と9.700円、ミノルタはロッコールQE35mm f4広角、ロッコールTC135mm f4望遠と組み合わせた低価格セットをラインナップしている。
学生アルバイトの最初の給料でこれらのレンズを揃え、パトローネ無しの低価格フィルム・コニパンSSイージーローディングを大量に使った思い出がある。
ロッコールTD45mmが発売された当時はパンケーキレンズの呼称は無く、ボディキャップ替わりと酷評され販売は伸び悩み、TTL一眼レフ・SRT101の登場によるメーター連動ピンがついたMCロッコールへの製品シフトに伴って姿を消している。
もともと販売量が少ないロッコールTD45mmはパンケーキレンズブーム時に45.000円程度で中古カメラ店に並んでいたが、最近では見かける事も稀な「レア製品」になっている。
低価格レンズとはいえ、ロッコールレンズの特徴である色再現性とテッサータイプレンズのクリアさ、そして高いシャープネスが魅力である。ロッコールTD45mmと組み合わせるボディは、勿論ミノルタNEW SR-1である。

ノートルダム寺院とセーヌ河畔

ノートルダム寺院とセーヌ河畔

ロッコールTD45ミリとミノルタNEW SR-1

ロッコールTD45ミリとミノルタNEW SR-1

Aiニッコール45mm f2.8P

2001年のマニュアルフォーカス一眼レフ・FM3Aの標準レンズとして発売されたレンズで1969年のGNニッコール45mmのリメイクでは無く全く新設計のテッサータイプ・パンケーキレンズである。
Aiニッコール45mmはオートフォーカス、デジタル一眼レフ用レンズに多用されているプラスチック鏡胴ではなく「金属鏡胴」を採用、更に「専用フィルター」「専用レンズキャップ」「専用UVフィルター」「金属製ふじつぼ型フード」と徹底的にファン心理をくすぐる物づくりに徹したレンズで発売当時から48.000円の価格にプレミアがついた程の人気レンズである。
最新パンケーキレンズだけにレンズ性能も秀でており、ニコンのフラッグシップ一眼レフ・F6やデジタル一眼レフとの組み合わせも楽しめる性能を有している。このAiニッコール45mm用のボディにはNew FM2を選択、New FM2のシルバーボディとの組み合わせはベストマッチングで、デジタル一眼レフ・オートフォーカス一眼レフでは得られない金属カメラの美しさも堪能している。

ビルアケム橋とエッフェル塔

ビルアケム橋とエッフェル塔

Aiニッコール45ミリとニコンNew FM2

Aiニッコール45ミリとニコンNew FM2

T*テッサー45mm f2.8

ロッコール45mm, Aiニッコール45mmとテッサータイプのパンケーキレンズが揃うと「どうしても欲しくなる」のが本家カールツァイスのテッサーレンズである。
ギリシャ数字の「4」を語源とするテッサーレンズは、カールツァイスが開発した3群4枚構成レンズの名称でカールツァイス以外のメーカーは「テッサータイプ」と称して競って製品化した優秀レンズ構成の代名詞的存在である。1982年に京セラが製品化したテッサー45mm f2.8はT*(Tスター)マークを付けた「本家テッサーレンズ」で発売価格は37.000円である。このレンズは生産本数も多い事から程度の良い中古レンズを容易に購入する事が可能で、私は東京・早稲田のコンタックス専門店で新品同様品を購入する事が出来た。
T*テッサー45mmと組み合わせるボディとしては、京セラが1993年に「根強い海外のYASHICAブランド志向」に応えて商品化したヤシカFXスーパー2000の逆輸入品を選択した。露出計用以外の電池が不要のFXスーパー2000は発売当時、「電池不要のサバイバル一眼レフ」というキャッチコピーが付けられていた記憶がある。このカメラはニコンFM10同様に国産メーカー・コシナのOEM製品だが430gの軽量ボディと80gのパンケーキレンズの組み合わせはハンドリングも良く手軽さも魅力である。勿論、「写り」はテッサー品質を楽しむことが出来る。

冬枯れのボージュ広場

冬枯れのボージュ広場

T*テッサー45ミリとヤシカFXスーパー2000

T*テッサー45ミリとヤシカFXスーパー2000

XRリケノン 45mm f2.8

1993年のカメラ雑誌でXRリケノン45mmの存在を知った。リコーが同社のマニュアルフォーカス一眼レフ・XR-7 MK2と同時に発売したテッサータイプのパンケーキレンズで発売当時の価格は9.200円。同時にXRリケノン28mm f3.5という広角パンケーキレンズも発売している。被写界深度目盛も省略したプラスチック鏡胴のXRリケノン45mmの重量は僅か55gと最軽量パンケーキレンズである。XR-7,XR-8,XR-8スーパーと続く同社一眼レフは写真後進国向けをターゲットとし、国内販売に余りウェイトを置かなかった事もあり当該レンズの供給本数も少なく2006年に新宿西口の中古カメラ店で漸く新品同様品を購入した経緯がある。このレンズの描写性能は大人気のGRシリーズ・デジタルカメラのリコーレンズだけに十分満足できる性能で、XR-8ボディと組み合わせてレンズ+ボディ465gのコンパクトカメラ並みの軽量一眼レフの魅力を満喫している。目下、広角パンケーキXRリケノン28mmを捜索中である。

サンマルタン運河と北ホテル(中央建物)

サンマルタン運河と北ホテル(中央建物)

XRリケノン45ミリとリコーXR-8

XRリケノン45ミリとリコーXR-8

ズイコーオートS 40mm f2

ズイコーオートS 40mm f2はオリンパス・フィルム一眼レフの最高機種であるOM-4とともに1983年に発売されたパンケーキレンズで6群6枚構成の準広角パンケーキレンズである。6群6枚の本格レンズ構成にも関わらずレンズ長25mm、最短撮影距離30cm、開放F2というスペックが魅力である。レンズ構成、金属鏡胴より重量が140gと少し重めとなったが、ずっしりした重量感も高性能が期待できる頼もしさを醸し出している。
カメラ雑誌等で描写特性に関する評価がいま一つの記事を目にするが故・米谷美久さんのオリンパスが製品化した自信作でカラーバランスも含めて十分満足できる性能である。
このレンズのライバルには1979年発売のコニカヘキサノンAR40mm f1.8があり、明るさ、価格面ではヘキサノンに一歩譲るものの市場人気は非常に高くハーフサイズ一眼レフ・オリンパスペンFシリーズ用のパンケーキレンズ・ズイコーオートS 38mm F2.8と共に幻の存在と呼ばれる程の超人気レンズとなっている。このため、発売価格22.000円の2〜3倍の中古価格で取引されている。
ズイコーオートS40mmと組み合わせたボディは1997年発売のOM2000、オリンパスが東欧・東南アジア等の写真後進国市場向けに製品化したフルメカニカル・マニュアルフォーカス一眼レフの最終製品である。ニコン、リコー、ヤシカ同様のOEM製品であるが平均測光/スポット測光切替機能を搭載したガンメタリックの美しいボディである。

ルーブル美術館とカルーゼル凱旋門

ルーブル美術館とカルーゼル凱旋門

ズイコーオートS40ミリとオリンパスOM2000

ズイコーオートS40ミリとオリンパスOM2000

ヘキサノンAR40mm f1.8

ヘキサノンAR40mmF1.8は世界初のオートワインダー内蔵一眼レフ・コニカFS-1の標準レンズとしてカメラ本体と共に1979年に発売された準広角パンケーキレンズである。
レンズ構成は5群6枚の変形ガウスタイプで1983年発売のオリンパス・ズイコーオートS 40mm f2がライバル製品である。このヘキサノンAR40mmはFS-1の後継機種FT-1、FC-1の標準レンズとしてセット販売されている事より中古市場での流通量も多く1万円程度で程度の良い製品を入手することが可能である。
私がヘキサーAR40mmと組み合わせて使用しているボディは1983年発売のFT-1、露光補正機能を充実させたFT-1はコニカ一眼レフの中で最も完成度が高いと評価されているだけに発売後25年を経過した今日でも駆動音が気になる程度でどっしりしたボディの使い勝手はなかなか良い。
話題が横道にそれるが、1985年に発売されたコニカ一眼レフの最終製品・TC-Xは前後2枚のプラスチックを張り合わせた最中構造のチープな製品で後進国向けに細々と出荷され1989年に生産終了、コニカの一眼レフの30年にわたる歴史が幕を閉じている。私は何故かこのチープなTC-Xに哀愁を感じ2006年に程度の良いものを購入している。

映画、CM撮影に登場するビルアケム橋

映画、CM撮影に登場するビルアケム橋

ヘキサノンAR40ミリとコニカFS-1

ヘキサノンAR40ミリとコニカFS-1

SMCペンタックスM40mm f2.8

クイックリターンミラー、TTL測光等の先進技術を世界に先駆けて開発した旭光学工業(ペンタックス・HOYA)が1976年に発売した小型軽量一眼レフ・ペンタックスMEと同時に発売されたKマウントの代表的なレンズがSMCペンタックスM40mm f2.8である。
レンズ構成は4群5枚、レンズマウント部からレンズ先端までの厚みが18mmと超薄型パンケーキレンズである。
このレンズの実力は非常に高く開放絞りから水準を超える解像性を示し、色再現も申し分無いカラーバランスを有している。問題点と言えば、最短撮影距離が60cmと長い事とレンズが余りに薄いためにフォーカスリングの幅が約2mmと極端に細くなり操作性が低下するという贅沢な問題点である。
SMCペンタックスM40mmと組み合わせるボディには、ペンタックスKMからセルフタイマー、プレビュー機構を省いた輸出モデル・K1000を選択した。なんと1976年から1997年までの21年間販売されたロングランモデルでペンタックスの伝統が感じられるデザインが気に入っている。

チュイルリー公園とリボリ通

チュイルリー公園とリボリ通

SMCペンタックスM40ミリとペンタックスK1000

SMCペンタックスM40ミリとペンタックスK1000

フォクトレンダーウルトロン40mm f2

2007年12月にコシナがニコンAi-SとペンタックスKAマウント用として発売したパンケーキレンズ。Aiニッコール45mm f2.8Pと同様に「金属鏡胴」「ふじつぼ・ドーム型フード」25cmまで接写できる「クローズアップレンズ」等々、パンケーキファンを魅了する内容である。Ai-Sニッコールタイプは、CPU内蔵型のためにニコンカメラの各種露出機能にもオートで対応できる事も大きな魅力である。
5群6枚構成のレンズは開放絞りよりシャープネスが高く、クリアな再現性はズームレンズに慣れた今日、一段階異なる画質に気づく程の性能で50.000円の価格に十分見合ったものである。フォクトレンダーウルトロン40mmに組み合わせるボディとしては、輸出モデル・ニコンN6000を選択した。ニコンN6000はF601からオートフォーカス機能とストロボを省略したモデルで、国内ではF601Mの名称で1990年から65.000円で販売された。最新パンケーキレンズと高機能マニュアルフォーカスボディとの組み合わせはベストマッチングで、フォーカシングに集中できる撮影の妙を満喫している。

オルセー美術館の模写シーン

オルセー美術館の模写シーン

フォクトレンダーウルトロン40ミリとニコンN6000

フォクトレンダーウルトロン40ミリとニコンN6000


(写真・文 尾崎)