上野&尾崎のカメラ散歩

 

時代のあだ花=APS

現在販売されているAPSネガカラーフィルム

現在販売されているAPSネガカラーフィルム

 時代のあだ花とでも言いましょうか、もはやAPSは風前のともしび、昔買ったAPSカメラがあるからたまに撮影している、と言った方がいいのかもしれません。APSにリバーサルフィルムがあったことを知る人も少ない。ところが存在したのです。富士フィルムがわずか1種だけでしたが発売していましたし、ラボでも受け入れていました。

 APSは「アドバンスト・フォト・システム=Advanced Photo System」の略で、「進化した写真システム」と訳せます。コダック、富士フィルム、ニコン、キャノン、ミノルタが共同開発、1996年4月に販売が始まりました。専用フィルムを「Ix240」といいますが、このIxは「Information Exchange」、つまりデジタルカメラのヘッダーのように撮影日、時刻、プリントサイズなどをフィルムにコーティングされた磁気面に記録できるところから名づけられました。「240」はフィルム幅の240ミリを指します。(ウィキペディアから参照)。

コダック APSカメラとAPSフィルム

コダック APSカメラとAPSフィルム

フジ 100ix APSカラーリバーサルフィルム

フジ 100ix APSカラーリバーサルフィルム

APS画面サイズ 左:APSフィルム・右:35ミリフィルム

APS画面サイズ 左:APSフィルム・右:35ミリフィルム

 露光面積は16.7×30.2ミリ。縦横比は9:16。カメラ側で「H」「C」「P」の切り替えができ、それぞれ「H」(9:16)、「C」(2:3)、「P」(1:3)と縦横比を変えながら撮影が楽しめました。「H」(9:16)はハイビジョンサイズ、「C」(2:3)は35ミリ判と同じ、「P」(1:3)はパノラマサイズを指します。

 フィルムはカートリッジに収まっているため、手に触れることはなく汚れが付かないことも利点でした。ラボでは必ずインデックスプリントを付けます。それを元に焼き増しの指定をするのです。撮影済みフィルムの二重露光もできないようになっていましたし、機種によってはフィルムの途中交換が出来ました。フィルムサイズが小さいため、カメラも小型でした。 一見便利なように思えたこのシステム、使っているうちに欠点が目に付くようになりました。撮影済みカートリッジの保管がかさばる、インデックスプリントをなくしてしまうとカートリッジに何が写っているか分からない等々です。またフィルムサイズが小さいため、大伸ばしに弱い、といったことも指摘されました。

 メーカーも初期のころは本気で取り組み、コンパクトに始まり一眼レフまで売り出しました。一眼レフの商品名は次の通りです。ニコン=Pronea(プロネア)、キャノン=EOS-Ix、ミノルタ=Vectis-S(ベクティス)、オリンパス=Centurion(センチュリオン)、富士=Epion(エピオン)。コンパクトカメラの商品名も列記します。キャノン=IXY(イクシ)シリーズ、ニコン=Nubis(ヌービス)、ミノルタ=Vectis(ベクティス)、ペンタックス=Efina(エフィーナ)、コニカ=Revio(レビオ)、富士=Epion(エピオン)などです。何やらお菓子か洗剤のような名前です。手元にある「キタムラカメラ」の2001-2002年ころのカタログではまだAPSは健在ぶりを示しています。

APS1眼レフ ニコンPRONEA 600i 1996年発売(24-70mmズームレンズ付 107,000円)

APS1眼レフ ニコンPRONEA 600i 1996年発売(24-70mmズームレンズ付 107,000円)

APS1眼レフ ミノルタ VECTIS S-1 1996年発売(62,000円)

APS1眼レフ ミノルタ VECTIS S-1 1996年発売(62,000円)

 APSが世に出てまだ10数年ですが、もう過去のものになろうとしています。中古市場でも不人気です。時代がデジタルに変わり、APSは運がなかったのかもしれません。ただ名称として、デジタルカメラの受光素子にAPS-CサイズとかAPS-Hサイズとして使われています。これが唯一の残影でしょうか。

コニカ APS コンパクトカメラ REVIO・レビオ

コニカ APS コンパクトカメラ REVIO・レビオ

 「初ものに弱い」。これは新聞人の特性です。ご多聞に漏れず、私もその一人です。APSにもすぐ飛びつきました。97年にコニカのコンパクト=レビオ(24-48ミリ。35ミリ換算では30-60ミリ)を買い求め、飽き足らずにミノルタの一眼レフ=ベクティスS1(96年6月発売)へ。ベクティスS1は50ミリマクロ(35ミリ換算では62.5ミリ)を初め交換レンズ(Vマウント)として22-80ミリ(35ミリ換算28-100ミリ)、25-150ミリ(35ミリ換算=31-188ミリ)など4本を揃えました。ボディーも2台購入しました。
究極はコンタックスTIx(97年10月発売)です。TシリーズのAPS版でチタン素材のボディー、ツァイスのゾナー28ミリ(35ミリ換算=35ミリ)f2.8を装着していました。1/1000秒の高速シャッター、露出補正機能、絞り優先のAE機能まで持ち、最高級APSコンパクトに恥じない製品でした。定価12万円ということにも驚かされました。後の「T3」へ引き継がれたデザインは今でもファンが多いようです。私はこれに専用のフード、フィルター、皮ケースを付けて、時に散歩カメラとして使っています。

APSリバーサルは知る限り、富士フィルムだけが製品化していたようです。しかし09年に販売が中止となりました。感度100で40枚撮り。発色はプロビア100Fに似てナチュラルでした。本稿でAPSリバーサルで撮影した数コマを紹介しています。なお、APSリバーサルはラボではすべて「H」仕様のマウント。9:16の縦横比が私は大好きでした。
 (09.12=上野記)

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