トリプレットレンズで撮るミコノス島
撮影レンズの基本は、凸レンズ一枚の単玉レンズ。1957年発売の「フジペット」(富士フィルム)等の初心者用カメラ、トイカメラに多用されているがレンズ収差の問題より高画質を期待する事は出来ない。
そこで凹レンズを組み合わせて収差補正を行う事になるが、凸凹レンズの組み合わせではプラスマイナス・ゼロとなり結像出来ない。対策として凸レンズを一枚追加した凸凹凸の単レンズ3枚構成がレンズ収差をある程度補正できる最低基本構成になる。
この3枚構成レンズを「トリプレット」と称し、1894年に登場以来、今日まで採用されるロングライフのレンズ構成となっている。
「トリプレットレンズ」の特徴としては次の項目を挙げる事が出来る。①構造が簡単。②生産コストが低い。③価格に見合った性能が得られる。④クリアな画像再現が得られる。
歴史的なトリプレットレンズには、ライツのエルマー90mm f4、ツアイスのトリオター85mm f4、コダックのエクタノン等を挙げる事が出来る。
国内では、1948年に発売された戦後の国産カメラ・実質1号とされるミニヨン35(東京光学・トプコン)のトーコー45mm f3,5に採用されたのが幕開けで、1950年にケース付き8300円で発売されベストセラーになったリコーフレックスⅢ(理研光学工業・リコー)も80mm f3,5のトリプレットレンズを採用している。
ライツ・エルマー90mmf44
リコーフレックス(リコー)
残念ながら、このトリプレットレンズには①大口径化が難しい。②広角化が難しい。の問題があり、画角が30度を超えると非点収差が顕著となる事よりF3,5 ~4程度、画角30度以下の中望遠レンズに採用されたが、1902年にカールツアイスが開発した3群4枚のテッサータイプに主役の座を明け渡す事になる。
最後まで残ったトリプレットレンズの活路は、要求品質の低い低価格コンパクトカメラである。現在、2009年8月時点で販売されているトリプレット・コンパクトカメラは、富士フィルムの「クリアーショットS-AF」(フジノン26mm f5,6)と「クリアーショットM」(フジノン29mm f5,6)の2機種に代表される程度である。
一方、高級コンパクトカメラにトリプレットレンズが採用されたケースもある。
1992年にミノルタ(コニカミノルタ)が二万台の限定生産を行った「PROD '20S」35mm f4である。1920年代のアメリカンスタイルを復元した金属ボディの当該機は48000円の高価格で有ったが話題を集めた。
クリアーショット S-AF(フジフィルム)
PROD'20S(ミノルタ)
一眼レフ、レンジファインター用カメラの交換レンズとしてのトリプレットレンズは、普及型・低価格の中望遠レンズに用途を限定して数社より製品化が行われている。
ライツ社は、エルマー90mm f4、ライバルのツアイスは、トリオター90mm f4、トプコール90mm f3,5(東京光学・トプコン)ロッコールTC100mm f4,TC135mm f4(コニカミノルタ)そしてニッコールT10,5cm f4 (日本光学)等がある。
ニッコール T10.5cm f4(ニコン)
ロッコールTC135mm f4
私の保有レンズは、ニッコールT10,5cmとロッコールTC135mmの2本、「3群3枚の潔さ」と「クリア再現」に魅力を感じている。特にズームレンズが一般化した今日、10~15枚程度のレンズ構成は当たり前で、レンズ枚数増加による光量損失、表面反射等のゴーストによる画質劣化を否定はできない。
特にニッコールT10,5cmは、「廉価版の品質が全てのニッコールレンズ品質を代表する」とのコンセプトで開発を行っており、比類ない高性能トリプレットレンズを作り上げている。
この開発経過は、「ニッコール千夜一夜物語」第21夜で詳細に紹介されており、カメラファンは必読である。
ニッコールT10,5cmの中古市場価格は、7~10万円程度と高いが貼り合せの無い単レンズ3枚構成、第一レンズに硬く、擦れに強い重バリウムクラウンガラスを採用している事もあり経年レンズにも関わらず程度の良いレンズが残っている。
作例はギリシャ・ミコノス島での夕日撮影時に、ニコンFM2+ニッコールT10,5cm、ミノルタSR-1+ロッコールTC135mmの組み合わせで撮影したものである。
ニコンFM2+ニッコールT10.5cm
ミノルタSR-1+ロッコールTC135mm
ミコノス島は、アテネの南東約100Kmにある「エーゲ海の島の代名詞」とされる観光の島で、真っ白な壁の街並み、風車、青い空と青い海とのコントラスト、そして白い迷路のミコノスタウン等々 魅力に溢れておりクリアな同島のシーンはトリプレットレンズの被写体として最適である。
ミコノスタウン ニッコールT10.5cm f4
アノ・ミリの丘 ロッコールTC135mm f4
ミコノス島の人々は、旅行者を快く受け入れる風習があり、3日も滞在するとあちこちに顔馴染み・俄か友達が出来た様に感じられる。残念ながら、ホテル数が少なく同島に宿泊するツアーが極めて少ない為に個人旅行が前提となるが、帰りの空港で「また来よう」と心に決める程に魅力的である。(尾崎)
アノ・ミリの丘
ニコンF6 ズームニッコール24-85mm
ミコノス海岸
ニコンF6 ズームニッコール24-85mm
ミコノスタウン パラボルティアニ教会
ニコンF6 ズームニッコール24-85mm
ミコノス港 セントニコラス教会
ペンタックス645NⅡ 45mm
ミコノスタウン 白い迷路
ニコンF6 ズームニッコール24-85mm
ミコノスタウン 街は白壁と青い窓・扉が原則
ニコンF6 ズームニッコール24-85mm
