上野&尾崎のカメラ散歩

 

驚きのロングライフ一眼レフ

今日のテーマはロングライフ一眼レフカメラですが、どれぐらいのロングライフ製品があるのですか? 最近のデジタルカメラは買って一年もしないうち新製品が発売されてしまい折角高いお金を出して買ったお気に入りカメラが旧型になってがっかりした経験があるのですが。

オリンパスEP-1デジタル1眼レフ

オリンパスEP-1デジタル1眼レフ


往年の名機オリンパスペンF

往年の名機オリンパスペンF


ミノルタX-700

ミノルタX-700

上野)デジタルカメラはフィルムに相当するCCDやCMOSセンサーという撮影素子が半年単位で新しくなるので、それに連動した新製品が発売されるといったパターンの繰り返しですね。本当に進歩が速いので30万円以上もするフラッグシップのデジタル一眼レフの性能を10万円以下のビギナー向け新製品が上回ってしまうとんでもない時代になりましたね。

尾崎)特にデジタル一眼レフは各社の競争が激しいので製品ライフが極端に短いですね。
例えば、2009年7月にオリンパスが発売したデジタル一眼レフ・EP-1,フィルム一眼レフの名機・オリンパスペンFのイメージとカメラ好き女優の宮崎あおいさんのCMで若い女性を中心に大ヒットしましたが、何と5カ月後の2009年12月には新製品EP-2が発売されています。EP-1を買った人は相当がっかりされたでしょうね。
オリンパスはEPシリーズのイメージベースとしたオリンパス・ペンシリーズを1958年から1981年までの23年間も販売しているのでフィルムカメラとデジタルカメラのギャップを自ら実証してしまいました。

上野)私が使っていた35mmレンズシャッターカメラ・キャノネット(キャノン)も1961年から1972年のキャノネットGⅢまで11年間に600万台を販売したとされています。
また、私が2台保有しているミノルタ(コニカミノルタ)のマニュアルフォーカス一眼レフ・X-700も19年間のロングライフ製品です。
このX-700は、1981年に発売され、2000年に販売が終了しています。発売当時の価格がボディのみで63.000円、世界初の本格マルチプログラム露光制御システム搭載として1981年のヨーロピアン・カメラ・オブ・ザ・イヤーを受賞した名機です。ミノルタは世界初のオートフォーカス一眼レフα7000で一世を風靡しましたがマニュアルフォーカスカメラでも高い評価を得ましたね。何と言ってもライカのフィルム一眼レフR3からR7までがミノルタのXシリーズのライセンスを受けていた程ですので世界がその実力を認めた事になりますね。

わっ、すごいですねライカの最高級一眼レフがミノルタ製なんて、日本のカメラ技術が世界の頂点を極めた実例ですね。

フィルムワインダーを装着したミノルタX-500

フィルムワインダーを装着したミノルタX-500

尾崎)当時のミノルタは上野さんのX-700,フォーカスエイド方式のX-600,そして実用機のX-500の3機種をそろえて随分と頑張っていました。私もX-500を保有していますが本当に使いやすいですね。特にマニュアルフォーカス一眼レフはファインダーの見やすさが重要ファクターなのですがミノルタ独自のアキュートマットスクリーンの見やすさは定評がありました。

上野)そうそう、ミノルタのファインダーは明るくピントの山が掴みやすかったですね。発売当初はサービスセンターでファインダースクリーンの交換まで行っていて私もスクリーンを方眼マットに交換して使いました。

尾崎)少し専門的になりますが、ミノルタX-700のファインダーは倍率0,9倍、視野率95%となかなかのレベルで特にファインダーの明るさは他社一眼レフよりも半絞りは明るいと評価されていました。このミノルタのファインダー造りはミノルタα9(視野率100%、倍率0.73倍)で頂点に達し、プロ写真家が最高の折り紙をつけました。このファインダー技術はソニーのデジタル一眼レフα9に引き継がれているとされています。

上野)しかし、ミノルタX-700の19年はすごいですね。ただボディがエンジニァリングプラスチック製でプラスチック感が強く、カメラボディの質感が無かったのが残念でした。いつも使っている部分がテカテカに光って来て安物然としてはたはた困りました。

尾崎)そうですね。ミノルタX-700は高級感が欲しかったですね。上野さんはX-500と最終モデルのX-370Sもお持ちですよね。

上野)X-500はX-700のサブ機として販売終了後暫くしてから新橋の中古カメラ店に頼んで購入しましたが実用機のために程度が余り良くなく返品しました。X-370Sは2000年に国内販売されたXシリーズの最終モデルでミノルタMDレンズの活用性を考えて購入しましたがX-360という輸出モデルの国内転用機でダイヤル操作が使いにくく文字通りX-700のバックアップとしてそのまま保管しています。フィルム一本撮った程度ですね。

すごいですね。バックアップまで考えてカメラを持っているなんて初めて聴きました。

上野)新聞社が新聞発行を止めないようにバックアップ体制を採っているのと一緒ですよ。
根っからの新聞人なもので。何事もバックアップを考える習慣が身についているのですね。
尾崎さん、ミノルタX-700以上のロングライフカメラは確かペンタックスLX(ペンタックス・HOYA)とニコンF3(日本光学)でしたね。

尾崎)そうです。ペンタックスLX,ニコンF3がいずれも20年のロングラン製品です。

20年、すごいですね。私の歳とほぼ同じだなんて。よほど基礎・基本設計がしっかりしていたのでしょうね。

上野)ハピコさん年齢を四捨五入していませんか。

ニコンF3ボディ

ニコンF3ボディ

尾崎)ニコンF3は1980年に登場したフラッグシップ機で2000年に生産完了、発売当時の価格が183.000円(ボデイのみ)でした。デザインは、当時積極的に委託していたジウジアーロさんのデザインです。

上野)当時のニコンFシリーズは、プロ・報道写真分野を独占、キャノンはどうしても太刀打ち出来ませんでした。静岡新聞も全てニコンでしたね。
ニコンF3はフラッグシップ機の華やかさはありませんでしたが、文字通り質実剛健の使い勝手の良いカメラで余りのロングセラーのために後継機種ニコンF4の販売に支障を来した程でした。

ペンタックスLX

ペンタックスLX

尾崎)続いてペンタックスLX。ニコンF3と同じ1980年の発売で、これもまたニコンF3と同じく2000年まで販売されました。1994年には旭光学工業60周年の記念モデルとしてチタンボディのLXチタンが追加発売されています。
ペンタックスの一眼レフはミノルタと同様に大衆向け製品としての位置づけが一般的でペンタックスLXはこのイメージ脱却を目指した同社初のシステムカメラで現在のデジタル一眼レフK-7,K20で採用されている防塵・防滴ボディを始めて採用しています。
華やかな特徴もなく質実剛健の性能がロングラン製品化の大きな要因になり、チタンボディは生産量が少なかったこともあり現在でも中古カメラ市場では高値で取引されている人気カメラです。

ロングセラーカメラに失敗談はないのですか

ペンタックスSP(スポットマチック)

ペンタックスSP(スポットマチック)

上野)旭光学は最初のTTLカメラ・ペンタックスSP(スポットマチック)で失敗をしました。
1964年に発売したペンタックスSPは空前の大ヒットとなり同社の業績を一挙に押し上げました。同機は大衆向け一眼レフとして1974年までの10年間も販売を継続、この間に日本光学、ミノルタ等のライバルメーカーが対抗機種を開発、旭光学は後続製品のKシリーズの販売が遅れ、折角獲得したシェアを大きく落としてしまいました。
ミノルタの場合は先程のX-700とオートフォーカスのα7000,α707等を並行販売、日本光学もニコンF3と後継オートフォーカスF4をやはり並行販売してヒット製品一本立ての販売政策を採っておりません。旭光学の自信過剰、油断大敵でしたね。

尾崎)旭光学は販売政策では失敗をしましたがTTLという造語を業界残しました。
旭光学はペンタックスSPの発売からTTLという用語を使いました。Through The Lensレンズを通した光を測光するという意味でしたが、米国写真業界を初めとして国内外各方面より意味が異なるとして反対されましたが、ペンタックスSPの大ヒットをバックに米国内でもTTLという表現を使い続けついに世界が認知する業界標準用語にしてしまいました。

ペンタックスという社名は昨年ガラス大手のHOYAに買収されてなくなってしまいましたが「社名は消えてもTTLは残る」 虎の皮のカメラバージョンですね。

ニコンFM10

ニコンFM10

上野)全く話題にならないロングセラー一眼レフがありますよね。ペンタックスのK1000とニコンFM10で、確か尾崎さんは両方お持ちですよね。

尾崎)そうです。ニコンFM10は1995年から現在も販売されている唯一のロングランフィルム一眼レフです。35〜70mmの標準ズームとハードケースがついてリストプライスは50,000円です。データによれば販売累計は80万台を超えています。

いまどき80万台も売れているフィルム一眼レフがあるんですね。驚きです。
しかも皮ケース付き、皮ケースって昔の革ケースですよね。

ニコンFM10とOEMベースのコシナC1S

ニコンFM10とOEMベースのコシナC1S


ペンタックスK1000

ペンタックスK1000

尾崎)ニコンFM10は写真後進国向けのカメラで、電池が無くても撮れる機械式シャッターとマニュアルフォーカス、そして大切な財産であるカメラを守る皮ケースが必須条件なのです。
電池がないとシャッターが作動しない電子制御のカメラは嫌われます。リコーのRX-8シリーズ、オリンパスのOM2000,ヤシカのFXスーパー等、写真後進国向けに1990〜5年頃に供給された同一仕様カメラの唯一の生き残りがニコンFM10になります。これらのカメラはいずれも国内カメラメーカー・コシナのOEM製品のため、基本仕様は共通でした。

ペンタックスのK1000も電池不要の機械式シャッター、マニュアルフォーカスのカメラですがコシナOEMでなくペンタックスが中国工場で生産して1975年から海外で販売、国内は1986年から販売を行いました。このカメラは1997年まで生産しましたので21年のロングラン製品になりました。ベースモデルのペンタックスK2(1975年発売、72.000円)からセルフタイマー無、プレビュー機能無、ファインダー内情報無等、徹底的な「無い無いづくし」のカメラでしたが「写す機能だけの潔さ」が良かったのでしょうか予想外のロングラン製品になりました。
天体写真のマニアに人気があったとも聴いております。

上野)そうですね。天体写真は望遠鏡に一眼レフをセットして1〜2時間の長時間撮影を行うので電子シャッターのカメラは電池の消耗が激しく、また山頂等の寒冷地撮影も多いので電子カメラが苦手とする分野ですね。
私も息子が天体撮影を始めた時にミノルタのメカニカル一眼レフを買わせましたが、高感度フィルムを詰めて富士山の五合目とか北アルプスに寝袋を持って出掛けていました。
空気が澄む秋から冬に出掛けるのでカメラよりも本人が凍死しないかと親は大変でした。
しかし、ニコンのFM10現役は素晴らしいですね。もっともニコンマニアはFM2,ニューFM2,FM3Aと続くFMシリーズに異母機のFM10を入れていいか悩んでいる人もいると聴いた事がありますが。
マニュアルカメラが無くなって写真学校も困っているらしいですね。

えっ、写真学校はマニュアルフォーカスの一眼レフでないといけないのですか?

オリンパスOM2000

オリンパスOM2000

尾崎)写真学校各校では学生が保有する一眼レフの条件としてピントも露出もマニュアルを基本としてきました。2000年まではニコンF3,FM2,ミノルタX-700,X-370S,ペンタックスMZ-M,オリンパスOM2000等がありましたが2000年以降になると頑張っていたミノルタX-370S,ペンタックスMZ-Mがなくなり、期待されたニコンFM3Aも2006年終了と短命に終わってしまいニコンFM10以外に選択肢がなくなっています。
このため、写真学校はフィルム一眼レフであれば何でも可と大幅条件緩和を強いられたようです。現在販売されているフィルム一眼レフはオートフォーカスも含めてニコンF6,FM10,キャノンEOS-1V,の3機種を残すのみとなってしまいました。(ケンコーブランドを除く)

現役フィルムフラッグシップ1眼レフ・F6

現役フィルムフラッグシップ1眼レフ・F6

上野)ニコンのFM3Aは残念でした。2001年に登場して期待したのですが2006年に生産を終了してしまいました。高級デジタル一眼レフやニコンのフラッグシップ一眼レフF6、キャノンEOS-1V等がマグネシウム合金ボディを採用する時代の流れに反し、真鍮プレスにクロムメッキと徹底した「こだわり」製品だけにロングライフ製品化を楽しみにしていたのですが本当に残念でした。ニコンが期待した程に販売実績が挙げられなかったのでしょうね。

尾崎)フィルム一眼レフがなくなると騒いでいた人達が「FM3Aは素晴らしい」と言ってるだけで、買わなかったのでしょうね。

上野)同感です。マニアはもっとフィルムを、フィルムカメラを使って欲しいですね。
プロもライフワークの分野ではフィルムを使って欲しいですね。最後の望みは若い女性のフィルムカメラ回帰、フィルム志向に期待したいですね。日本の元気な若い女性に。

お二人のカメラ談義が終わりそうもありません。今日はここまで。


▽ミノルタX-700=上野撮影

  • 満開のサクラ=静岡市の県立美術館
  • サクラの下で散歩=静岡市の県立美術館
  • サクラを撮る人、それを撮る人=静岡市の県立美術館
  • お堀端のサクラ=駿府公園
  • 満開のサクラ=駿府公園
  • 顔にかかる花びら=駿府公園
  • 整備された花壇=駿府公園
  • 初夏の日比谷公園
  • 日陰で読書=日比谷公園
  • 日比谷公園の噴水
  • ビル街の一角で=東京・日比谷
  • ビル街の中庭=東京・日比谷
  • ビル街の中庭=東京・日比谷