上野&尾崎のカメラ散歩

 

交換レンズよもやま話

今日のテーマは交換レンズについてです。ハピコのEOS Kissはズームレンズ一本きりですが、上野さん、尾崎さんは一杯もっていらっしゃるのでしょうね。

コムラーレンズ(三協光機)

コムラーレンズ(三協光機)

上野)一眼レフ、レンジファインダーカメラを使うようになると当然のことながら交換レンズが欲しくなります。昭和41年に最初の一眼レフを買ってもらった時もそうです。
ただ、キャノン純正のレンズは高くて手が出ない、しょうがないからレンズ専門メーカーの製品で間に合わせる訳です。
キャノンFTには、コムラー(三協光機)の28mm広角レンズとコミナー(日東光学)の135mm望遠レンズをつけました。
当初はもっぱら望遠レンズばかり使ってました。遠くのものが近くに見える望遠鏡と一緒で感動モノでした。それに比べて広角レンズの出番が少なかった。やはり広角レンズは当時の私の技量では難しかったのだと思ってます。 しかし、現在はほとんど広角レンズ一本やりです。
当時、ズームレンズはキャノン純正レンズもありましたが、高くて種類も少なく、単焦点レンズと比較して画質も良くなかったので私は使いませんでした。
オートフォーカス一眼レフが登場した以降、現在ではほとんどズームレンズ、むしろ単焦点レンズを探すのがメーカーによっては難しくなってます。時代の流れをズームレンズに感じますね。

コムラー135ミリ f2.8望遠レンズ

コムラー135ミリ f2.8望遠レンズ

尾崎)1960~1970年代にかけてコムラー、コミナー、トキナー(東京光器)、タムロン (泰成光学、タムロン)等のレンズ専門メーカーが随分活躍しました。カメラメーカーの純正レンズと比較して4割程度は安かったのでは無かったでしょうか。 上野さんのおっしゃる通り、当時のズームレンズはディストーション・歪曲収差の補正が難しく単焦点レンズと比較して使い物になりませんでした。

上野)1963年に日本光学がズームニッコールオート43~86mm F3,5を製品化しました。このズームレンズは世界初のショートズームで「標準ズームレンズ」の草分け的な存在として「ヨンサンハチロク」の別名で写真界に名を残しましたね。

ニコン・ズームニッコールオート43〜86mm f3.5

ニコン・ズームニッコールオート43〜86mm f3.5

尾崎)ニコンに続いて各社も積極展開するかと期待しましたが、性能面で単焦点レンズに劣るズームレンズに各社消極的で、「それでは」とレンズ専門メーカーがズームレンズ市場で頑張りました。1963年に発売されたタムロンズーム90~205mmはレンズ専門メーカーのパイオニア的な製品では無かったでしょうか。私の学生友達も「安くて便利」「画質は目をつぶって」と随分持ってました。タムロンの成功に続けとサン、トキナー、コムラー、シグマの順にレンズ専門メーカーのズームレンズ参入が続きました。

上野)尾崎さん、ズームレンズの性能が飛躍的に向上したポイントは何だったのですか。

尾崎)ズームレンズの性能を高めた技術は「多層膜コーティング」と「複合非球面レンズ」の開発にあるとされています。
ズームレンズは性質上、どうしてもレンズの枚数が多くなります。一般的にレンズはレンズ面一面につき約1%の光量損失が生じます。レンズの枚数が10枚あれば10%の光量が減ってしまう訳です。1971年に当時の旭光学・ペンタックスが開発した多層マルチコーティングにより反射光量損失は0,2%レベルまで低下、同時に解像度を低下させるフレア、ゴーストの大幅削減に成功しました。
1985年に発売された歴史的なオートフォーカス一眼レフ・ミノルタα7000と同時に発売された35~70mmの標準ズームには世界で初めて複合型非球面レンズが採用され、ディストーション・歪曲収差の問題を解決しました。

ミノルタ AFズーム35-70mmf4

ミノルタ AFズーム35-70mmf4

ミノルタ AFズーム35-70mmf4

ミノルタ AFズーム35-70mmf4

随分難しい話になってきましたが、複合型非球面レンズて何ですか。
ハピコまだついていけそうです。

ゴルナーグラートよりのマッターホルン朝焼け

ゴルナーグラートよりのマッターホルン朝焼け

フジGW670Ⅱ フジノン90mmf3.5(標準)


ゴルナーグラートよりのマッターホルン

ゴルナーグラートよりのマッターホルン

フジGW670Ⅱ フジノン90mmf3.5(標準)
※マッターホルンはスイスのビニオン社1眼レフ・アルパの語源となり外箱にもマッターホルンが描かれている。1984年に生産を終了したが生産台数が極めて少なく中古市場での価格も高い。

尾崎)薄い特殊透明樹脂で造った非球面層をガラスレンズに貼り合わせたレンズで、樹脂の経年変化、白濁、剥離等の問題を一挙に解決したものです。この複合型非球面レンズの登場によって一挙にズームレンズの性能が向上しました。その後、ガラス製の非球面レンズの技術も向上、現在では二種類の非球面レンズが使い分けられてます。カタログに「ガラスモールド非球面レンズ採用」「複合型非球面レンズ2枚採用」とか表記してある説明文を見た事があるかと思いますが、ディストーシヨン・歪曲収差の補正程度をアピールしている説明です。
レンズ交換の手間が省け、画質も単焦点レンズとさほど見劣りがしない現在、ズームレンズ全盛ですね。私も上野さんと一緒の単焦点レンズ派で、メインカメラのペッタックス645に単焦点レンズ4~5本を入れた約10Kgのカメラバッグを担いで出掛けてます。

上野)ズームレンズは撮影位置を変えずにフレーミングを変えられるので、何かイージーな感覚がして好きになりませんね。「前に行ったり」「後ずさりしたり」自分の足でレンズの画角にあったフレーミングをするのが原則で、パソコンで露出・色調整するデジタルカメラと同じく技術が無くなってますね。

尾崎)私の仲の良い商品撮影専門の写真家が昨年廃業しました。技術力が高く高級オーディオのカタログ写真等で定評のある人でしたが、広告代理店の若い担当者から「どうせパソコンで修正するから適当でいい」と言われたのがきっかけでした。

上野)話をレンズに戻しますが、尾崎さんもレンズ専門メーカーのレンズを使いました?

尾崎) 私の場合は、ミノルタが自動絞りの高級レンズとプリセット絞りの低価格レンズの二本立ての商品構成を採っていたので、学生当時はもっぱらプリセットの低価格レンズを使ってました。
35mm F4の広角レンズは当時の定価が9,800円、それを7,200円で購入した記憶があります。今でもたまに使ってます。すべてが手動のスローフォトもなかなかですよ。

上野)プリセット絞り、懐かしいですね。若い人には死語になりましたが、私のコムラー、コミナーレンズもプリセット絞りです。

ミノルタ W・ロッコール35mmf4

ミノルタ W・ロッコール35mmf4

ミノルタ普及価格レンズ

ミノルタ普及価格レンズ

プリセット絞りって何ですか。

プリセット絞り

プリセット絞り

上野)レンズに絞りリングが2本あり、1本は実際に撮影する絞り値を設定するリング、2本目はレンズの絞りと連動していて、ピントを合わせる時は一番明るい開放絞りを使い撮影するときは、指でリングを回すと1本目のリングで設定した絞り値でストップする仕組みになってます。
つまり、開放絞りでピントを合わせてファインダーから目を離すことなく指1本で絞り込める機能で慣れれば便利な仕組みです。
カメラ本体との連動を考慮する必要がないので初期のレンズ専門メーカーの製品に多用されましたね。

ところで上野さん、カメラ・レンズの名前の由来を教えてください。

上野)よく覚えてましたね。
では、ハピコさんの持ってるキャノンから。キャノンは1933年に精機工学研究所の当時の試作カメラ「カンノン」は観音様から名付けられ、「カンノン」が大砲の「Cannon」に変わりnがひとつとれて「Canon」となりました。Canonには規準の意味もあります。
「ニコン」は日本光学がコンタックスを範として日本のコンタックスの意味も含めて「ニコン」とネーミングしてます。「オリンパス」の旧社名は、高千穂製作所。日本の神々が住む高千穂連峰をギリシャの神山であるオリンポス山に置き換えたネーミングです。
「コニカ」と一緒になった「ミノルタ」は少し長くて、最初の日独写真機商会からモルタ合資会社、千代田光学精工を経て「ミノルタ」になってます。
語源は、Machinery and Instrument Optical by Tashimaの頭文字と稲が実るほどに頭を下げる「稔る田」からとしています。Tashimaは社長・田嶋社長の苗字です。
「コニカ」は小西六写真工業のカメラからcaを付けたカメラ名「コニカ」をそのまま社名とし、小西六の「六」は創業者・小西六衛門の六です。
カメラの名称では、社名にCameraのcaを付けたケースが多く、Leica,Fujica,Konica,Yashica等の代表例がありますね。
そしてレンズの名称では、社名をそのまま利用した「ニッコール」、六甲山からネーミングしたミノルタ「ロッコール」、創業社名の瑞穂光学からネーミングしたオリンパス「ズイコー」、旭光学・ペンタックス「タクマー」は、創業当時の関係者・梶原琢磨さんと切磋琢磨の琢磨からネーミングしています。
更に「タムロン」は旧社名・泰成光学当時のレンズ設計者・田村右兵衛さんのタムを採っており、私の好きなライカの標準レンズ・エルマーも、エルンスト・ライツ社のマックス・ベレッタさんが設計した事よりエルンストのエルとマックスさんのマを取ってエルマーとしてます。

ミノルタ・ロッコールレンズ

ミノルタ・ロッコールレンズ

ニコン・ニッコールレンズ

ニコン・ニッコールレンズ

ペンタックス・タクマーレンズ

ペンタックス・タクマーレンズ

オリンパス・ズイコーレンズ

オリンパス・ズイコーレンズ

フジ・フジノンレンズ

フジ・フジノンレンズ

コニカ・ヘキサノンレンズ

コニカ・ヘキサノンレンズ

ライカ・エルマー50cmf3.5

ライカ・エルマー50cmf3.5

自分の名前が残るなんて素晴らしいですね。ハピコールなんてレンズはありませんか。

上野)あったらいいですね。でもちょっと聴いた事がありませんね。
ライカの「ズマール」「ズミクロン」は、ラテン語のSunma・ズンマ 最高を語源とし、シュナイダーの「アンギュロン」もラテン語のAngulus・アングルス 角度から採った広角レンズ名で怪獣映画・ゴジラに登場するアンギラスとは関係ありませんよ。

上野さん良く知ってますね スゴー~イ

上野)いやはや、間違ってはいけないと念のために再確認してきたのですよ。

尾崎)ハピコさん、「ハピトール」というのがありますよ。
残念ながら、レンズ名ではなく写真の現像主薬名です。モノクロ写真の現像液には「メトール」と「ハイドロキノン」という薬品を使います。「メトール」はアグファの商標で学術名はモノメチル・パラアミノフェノール硫酸塩という薬品で、コダックは「エロン」富士フィルムは「モノール」という商品名を付けて販売しました。
「ハイドロキノン」は、そのままでいいのですが確か富士フィルムは一時期「ハピトール」の商品名を付けていた筈です。

イヤダ~! 薬品名なんて、それもゲンゾウ液なんて!!

上野)レンズのネーミングは何故かオートフォーカスになってから表記が無くなりましたね。カメラから撤退した「ロッコール」、「ヘキサノン」等は別として、ペンタックスの「タクマー」も無くなり、残っているのはオリンパスの「ズイコー」とニコンの「ニッコール」程度ですか。味気なくなりましたね。

京セラが販売したヤシカブランド1眼レフ

京セラが販売したヤシカブランド1眼レフ

尾崎)ブランドだけが生き残っているのが「Yashica」ですね。京セラがヤシカを買収してコンタックスブランドのカメラ事業を開始した時、写真後進国で「Yashica」ブランド志向が強くしばらくはヤシカブランドカメラの生産を継続しました。その後、京セラは「Yashica」ブランドを香港企業に売却しましたが昨年末から写真用品の㈱エクゼモードがブランド使用許諾権を得てYashicaブランドのデジタルカメラ、フィルムカメラの販売を開始しております。京セラ自体もカメラ事業から撤退してしまいYashicaの名前だけが残りました。
「会社死すとも、ブランドは残る」の好例ですね。
ちなみにヤシカのレンズは「ヤシノン」洗剤のような名前ですが、名前にふさわしくクリアな写真が撮れます。

ところで上野さん、尾崎さん お気に入りのレンズを教えてください。

ニッコール H 50cmf2

ニッコール H 50cmf2


カラースコパーを装着したベッサR

カラースコパーを装着したベッサR

上野)単焦点レンズでは、ミノルタの「ロッコール」は緑系色の写りがよく、またニコンの「ニッコール」はやや地味な色再現ですが好きなレンズです。
どのメーカーのレンズにもそれぞれ特徴があり、いろいろと楽しむことが出来ます。ズームレンズではそうした「くせ」をあまり感じる事が出来ません。
また、中望遠レンズの85mm,105mmのレンズは俗に「女性専科」といわれ、ポートレートを撮るのに欠かせない存在です。私はキャノンの105mmを専ら使ってましたが、絞り開放でモデルの女性を撮る。見た目以上のボケ味にレンズ設計者のセンスを感じる事が出来ました。
「これが私!」とモデルになってくれた女性にも大変喜ばれました。ポートレートは七難を隠すのがコツですね。
レンズ設計からするとライカの標準レンズ「エルマー」がいいですね。3群4枚の簡単なレンズ構成で、なおかつ沈胴式です。沈胴式はレンズの長さを縮める事が出来、かさばらない利点があります。今ではほとんど見かけない作りです。
近年、気に入って出番の多いのが「ベッサR」に装着しているコシナの「カラースコパー」です。映りのシャープさは勿論、手になじみ操作性が優れているレンズだと思います。
「カラースコパー」には尾崎さんの好きなパンケーキタイプもあります。

上野さん、今度、キャノン105mmでハピコのポートレートを撮ってください。

上野)ハピコさんがモデルならば素敵な写真を撮りますよ。

尾崎さんは、ポートレートは苦手と以前宣言してましたので頼みませんヨ

ニコンFM2とニッコールT 10.5cmf4

ニコンFM2とニッコールT 10.5cmf4

尾崎)正解です。
レンズの話に戻りますが、私も上野さんと同じでミノルタ「ロッコール」の色再現は好きです。ミノルタがカメラ事業から撤退時に私も基幹システムをニコンに切り替えましたが、色再現の差に随分と戸惑いました。
レンズ全体からみた場合、私は単純なレンズ構成のレンズが好きです。特にレンズ構成の基本中の基本・トリプレットレンズと単焦点の40~45mmの準広角と呼ばれるレンズが好きですね。トリプレットレンズはニコンのニッコールT10,5cm f4、とても三枚構成のレンズとは思えない描写特性が気に入ってます。
そして、準広角レンズ、大部分がパンケーキレンズと呼ばれる薄型レンズでキャノンと富士フィルムを除くニコン、オリンパス、コニカ、ペンタックス、ミノルタ、リコーそして上野さんから説明もあったコシナ・フォクトレンダーと各社が製品化しました。
デジタル一眼レフ用としても、オリンパスとペンタックスが製品を出していますが、私はもっぱらフィルムカメラ用、全メーカーのパンケーキレンズを揃えました。更にパンケーキレンズに見合ったカメラボディの選択も楽しく、とことん追求をしてしまいカメラ雑誌「日本カメラ」にパンケーキレンズ特集記事(2007,6)まで書いてしまいました。ハピコさん、ポートレートの替わりに今度「パンケーキのパリ」特集を御馳走しますよ。

各社パンケーキレンズ

各社パンケーキレンズ

ペンタックスK1000とSMCペンタックス40mmf2.8

ペンタックスK1000とSMCペンタックス40mmf2.8

日本カメラ

日本カメラ

えっ! パンケーキレンズって食べられるんですか? ポートレートとパンケーキ 何かわくわくしますね。